Understanding What We've Grown To Be/We Came As Romans

アメリカ出身、エレクトロコア/メタルコアバンドの2011年リリース2ndアルバム。
2005年からバンド活動を始め、2009年にはEqual Visionと契約し1stアルバム"To Plant A Seed"をリリースする。デビュー前のヴォーカリストは元I See Stars・現CDVRのChris Moore。デビュー前はヴォーカルを中心にメンバーチェンジが激しかったが、2008年頃からはメンバーが安定して現在の体制に至る。
2009年リリース1st"To Plant A Seed"は全米175位とそれなりのヒットを記録。
本作に至っては前作を大幅に上回る21位という好評をもって受け入れられた。
今回のレビューは、以前のものを大幅に加筆・修正しています。

Attack Attack!のブレイクにより一大ムーブメントとなって確立されたエレクトロニックなメタルコア/スクリーモ、いわゆるピコリーモ/エレクトロコア/シンセコア/トランスコア等々と称されるジャンル。当初はAA!に続けとばかりにスクリーモ要素が色濃くている上、ダンサブルな方向性でノリの良いトランスコアであったり、ちょっと陽気でエモさのあるチャラいピコリーモという路線がほとんど。もちろんそれまでもアクセント的にシンセを導入しているバンドは存在していたが、それは隠し味的なものでメインに据えているわけではなく、サウンド的にもメタルコア/スクリーモの範疇を大きく逸脱するようなスタイルではなかった。
そこへ現れたIn Fear And Faithという存在。エレクトリックと言っては語弊のあるバンドだが、シンセサウンドをピアノ音という形でスクリーモの中へ大々的に取り入れ、メランコリックでシリアスなサウンドを持ったスクリーモというスタイルを提示。それまでのチャラい系ピコリーモとは完全に一線を画していた。
そうして現在ピコリーモ/エレクトロコア/シンセコア/トランスコア等々と称されるジャンルは、チャラい系AAスタイルスクリーモとシリアス系IFAFタイプスクリーモに分離して確立されたように思う。

前置きが長くなったが、We Came As Romansの場合、Attack Attack!やIn Fear And Faithと違ってスクリーモベースではないのだが、精神性を共有しているのは(バンドがそれを意識しているかどうかは別として)明らかにIFAFの方と言える。ピコリーモなノリが良く素軽いスタイルには走らず、全編がシリアスでメランコリックなシンセで彩られたドラマチックなメタルコア。We Came As Romansは1st"To Plant A Seed"において自身のスタイルを完全に作り上げた。シンセの導入はメランコリーとドラマ性を引き立てるための必然の導入であった…そう思わざるを得ないほどサウンドの中で重要なファクターとなっている。
本作2ndアルバムも1stで築き上げた自身のスタイルを徹底的に磨きあげたドラマチックなメタルコアとなっている。これは、"進化"ではなく"深化"。1stにおいて過剰とも思えるシンセの導入とドラマ性の追求からすれば本作でのシンセは若干厚みが減少したように感じるかもしれないが、ポイントを的確に突くようなより効果的なシンセの導入は、メタルコアとしてのブルータリティの表現を際立たせているように感じる。
1stに比べブルータリティのあるスクリームパートの存在感が増したことによりメランコリックな歌メロパートが輝きを放ち、楽曲展開のドラマチックさは前作を遥かに上回るようになった。シンセはそうした展開美を盛り上げる舞台装置の一つにすぎず、シンセの重要性という意味では前作より低くなったのかもしれないが、スクリームとクリーンvo、ギターなどの各楽器隊、そしてシンセの一体感という意味では明らかな成長。
他の多くの「シンセを導入してみました」的なピコリーモ/シンセコアバンドと決定的に違うのは、何もシンセの導入具合が多い/少ないの差ではない。メランコリーやドラマ性を際立たせるためのシンセサイザーという意味では同じであっても、このバンドにとってのシンセはもはや"必然"の存在であるということだ。

プロディーサー的には1stもこの2ndもAttack Attack!と同じJoey Sturgisなのだが、安易に同じ路線の歌メロ重視のスタイルに走らせなかったのは腕の確かさなのだろう。素晴らしいプロデュースだと思う。
シンセコア/エレクトロコアというような「シンセありき」のスタイルで括るより、このバンドのサウンドは"ドラマチックコア"と表現するのが正しいだろう。少なくともドラマ性の追求という意味ではシンセの力に頼らずとも確立された音楽性があると感じる。それほどWCARは自身のスタイルを完全に築き上げている。
ドラマチックなメタルミュージックの好きな全てのリスナーに捧げる傑作である。

 

Understanding What We've Grown to Be - We Came As Romans

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