The Painter, The Canvas, The Muse/Your Name In Vain

アメリカ出身、スクリーモ/ポストハードコアバンドの2009年リリース1stフルアルバム。
Tragic Hero Recordsに所属する期待のバンドだったが、アルバムリリースの約半年後に解散。

サウンド的にはポストハードコア色が強く、キャッチーで浮遊感のあるメロディが特徴。シンセに頼らない分ギターは非常に流麗なプレイを披露しており、特にメタリックでも攻撃性があるわけではないが心地よさを感じるメロディは存分に堪能出来る。ヴォーカル的にはハイトーン系のクリーンvoが主体のクリアな音像で、時折フューチャーされるスクリームヴォイスでアグレッシブさと攻撃性を押し出しているが、全体的に見ればそうしたスクリーモっぽい部分はごく一部だし、そうした要素をこのバンドに望むのもお門違いといえる。
メロディ的にもプレイ的にも展開的にも奇を衒った部分は全く無く、そうした部分から見ると何が凄いのかとなるわけだが、逆に奇を衒っていない分かえって楽曲の展開美や構築美が色濃く出ている。クリーンvo主体のポストハードコアスタイルの中に一部で使われるスクリームvoもそうした構築美を壊すようなことにはなっておらず、渾然一体となってまとまっているのもバンドのアレンジ能力の高さを感じさせる部分だ。

1曲目の"Famous Last Words"はノリの良いポストハードコア曲。キャッチーで伸びやかなメロディラインを持つ楽曲で、一部使われているスクリームもアクセントになっていて良いと思う。この曲よりも若干アグレッシブさがある2曲目の"The Messenger"も伸びやかで爽快なメロディラインが魅力的で好きだ。
6曲目の"Persephone"は他の楽曲に見られるノリの良さよりも、ミドルテンポでしっとりと歌い上げる"聴かせる"楽曲に仕上がっている。ギターメロディもエモーショナルで心地良い感覚に包まれる佳曲。
アルバム中で個人的に最も好きなのが9曲目の"American Apparel"だ。ノリの良さとアグレッシブさを併せ持ちながら、このバンドらしい流麗なサビメロが印象的。スクリーモとも呼べないくらいスクリームvoは一部のバッキングで使われるのみだが、それでも攻撃性という部分ではアルバム随一の楽曲だと思う。

残念ながらこのアルバムを残して2010年をもって解散してしまったが、スクリーモ/ポストハードコア界の隠れた名作だと思う。路線としてはAlesanaやA Skylit Driveであるのは間違いなく、そうしたタイプのスクリーモが好きならオススメ出来る強力作だし、ポストハードコアが好きな人も聴いてほしいアルバムだ。

 

The Painter, The Canvas, The Muse - Your Name In Vain

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