Kingdom Of Might/Woe Of Tyrants

米国産メロディック・デスメタル/デスコアバンドの2009年リリース2ndアルバム。

1stはインディーズでリリース、本作からMetal Blade配給なのでメジャーバンドの仲間入り。

 

メロディック・デスメタルとヴァイキング・メタルの融合…と言えば一般的にEnsiferumやAmon Amarthなわけだが、このバンドがやっているのは正にその系統直下にある勇壮なバトル・デスメタルだ。

叙情メロディをぶちこんだ北欧メロデス・スタイルのバンドは世界中に掃いて捨てるほどいるが、こうしたヴァイキング・スタイルを持ち込んだバンドはなかなか出会えず世界的にも貴重な遺産的存在。

勇壮で猛烈にクサいメロディが特徴的で、2000年以前の古くから活動しているような老舗バンドならいざ知らず、20歳そこそこの世代でこの音楽性を再現してしまうのはもはやクレイジーと言っていいだろう。

エモい要素は微塵も無く、デス声オンリー、シンセの導入無しという硬派な作風。

こうした音楽性だけでもクレイジー度はかなり高いんですけどね。

困ったことに、このバンドの最強に狂ったポイントはギタリストなんです。

縦横無尽に弾きまくるとか、流麗なフレーズを乱舞させるとか、テクニカルでクラシカルなプレイを連発するとか、そのレベルで収まるのならメタルバンドにありがちな上手くて自己主張の激しいギタリストという評価で済むはずが、文字通りジャイアンの如き存在感の強さを発揮して我が物顔で暴れまくります。

楽曲を破壊することも厭わぬその暴虐で圧倒的なギタープレイはバンド内で無双状態ですが、ここまで徹底的に弾きまくるとそれがバンドの個性に思えてくるという、ドラえもんで言うところの「ジャイアンは理不尽であってこそジャイアン」という論理にも近い意味不明な納得感が生まれてくる作風でもある。

しかし、それ以上の最大のポイントはこのバンドがアメリカのバンドだということ。

メロディック・デスメタルあるいはヴァイキング・メタルをやろうとしているのは確かなのに、ブレイクダウンを持ち込んでしまうがためにデスコアになってしまっているという理解不能さ。楽曲的にはそれも上手く溶け込んでいるけれど、この徹頭徹尾メロデスの中にブレイクダウンがなぜ必要なのかと思う。

やっぱり、アメリカという風土が完全メロデス化というものを許さないのかなぁ。

 

Break The Fangs Of The Wicked

勇壮なイントロから始まるのが萌えるポイントだね。

楽曲中はDragonforceがヴァイキングメタルでもやったんじゃないかと思えるほど弾きまくりで、テクニカルなフレーズも豊富。特に後半部分はギターが(ソロ以外でも)休む間もなくピロピロやってる(笑。

 

Pearls Before Swine

Amon Amarthかと錯覚しそうなフレーズで始まって、その後もクサいメロディを連発。

このリードギタリスト、体力の限界にでも挑戦してるんじゃないかというくらいメロディを弾いてない部分を探すのが難しい。たまに変態的なフレーズもぶちこんできたりするし。例によって例のごとく後半部分は独壇場の様相を呈して、クラシカルなフレーズをアホかというくらいに弾き続ける状態。

 

Sounding Jerusalem

プログレッシブ的なテクニカルさが目立つ楽曲。前半部分はデスコアっぽく進行するけど、中盤あたりから怪しさが出てきて、特にリズム系の複雑さはアルバム中でも随一となる。リードがそれほど弾きまくってないのがポイントで、リズムギターのテクニカルなリフが光る。後半の疾走パートがけっこう好き。

 

一般的なデスコア/メタルコアファンにはクサすぎるメロディが超絶大盛りなためそれほどオススメできるわけではないが、Amon AmarthやEnsiferumやEquilibrium等のヴァイキング・デスメタルファンには激しくプッシュできる好盤。一般的な北欧メロデス好きの人が聴いてもステキと感じる音楽性でもある。

 

Kingdom of Might - Woe of Tyrants

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