The Vision & Reality/Tonight Is Glory

アメリカ出身のスクリーモ/メタルコアバンド、2009年リリース1stアルバム。
現時点(2012年)時点で最新作がこれ。現在も活動中だが新作はまだリリースされていない。

音楽性としては世間ではスクリーモと見られているし、当人達はメロディック・ポストハードコアを自称しているが、実態としてはクリーンvo比率が高くサビがエモいメタルコアといった感じで、一般的なスクリーモを想起して聴くとアグレッシブでメタリックな音像が前面に押し出されているので面食らうだろう。
スクリーモにしては相当にハードエッジでヘヴィさが特徴的ではあるのだが、単に"重く・激しく"の路線に乗ったスクリーモバンドとは違ってメロディアスなギタープレイが満載。ごく一部でシンセも使われている感じもするがメロディ的には完全にギターサウンドが担っている状態。リードギターはかなり強めに前面に出てメロディを弾きまくっているにも関わらずそれほど自己主張が激しくしていないのは好印象だろう。
そうしたメタルコア感を押し出した要素と対を成すのが、いかにもスクリーモといった感じのエモさを持った歌メロパート。楽曲全体がメロディアスなのはもちろんなのだが、メタリックで攻撃的なパートと爽快でエモさのあるパートの対比がこのバンドの"売り"。メロウに落とすのとは違って、歌メロパートでもノリの良さを減退させずに、エモさを湛えながら疾走させている。個人的には疾走曲は好きなので大歓迎ですね。
さて、そうしたヘヴィさとエモさの各要素だが、ヴォーカル的にそれらのパートで使い分けているというわけではない。クリーンvo比率が極めて高いので、エモい歌メロパートで歌い上げているのはもちろんのこと、
アグレッシブでヘヴィなパートでもクリーンvoを使っている。このあたりはポストハードコア的な方向性があるのかな、と思ったりする。だが、面白いのはエモいパートのバックでスクリームが炸裂したりすること。どのあたりでスクリームが乱入してくるのが読めない。声質的には、クリーンvoはスクリーモにありがちなハイトーン系。スクリームは高音のシャウト系と低音のグロウルを使い分けている。個人的にはクリーンも高音スクリームもさほど魅力的には感じないが、低音のグロウルに関してはブルータリティがあって好きだ。
落差自体はそれほど激しくはないがブレイクダウンらしきものも導入されており、楽曲内に起伏を生み出す効果的な要素ともなっている。ただ、全曲で導入されているわけではなくごく一部の楽曲だけだ。

アグレッシブでノリの良い疾走曲がアルバムほぼ全曲を占めているのも良いと思う。時折それがポップパンクっぽく聴こえたりするのは愛嬌とも言えるが。ただ、疾走曲をこれだけ取り揃えながら各楽曲それぞれに個性を与えて魅力的に聴かせるのはバンドのメロディセンスとアレンジ能力の高さを示していると言える。
2曲目の"Horizons"のようにアグレッシブさを全面にだした曲も好きだが、"It's Never Been This Quiet"のようなポストハードコア路線がこのバンドにはマッチして一番の良曲に仕上がっていると感じる。スクリームはごく一部のアクセント的にしか用いられていないが、楽曲のまとまり具合はアルバム随一。

 

The Vision And Reality - Tonight Is Glory

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