アメリカ産シンセコア/ピコリーモバンドの2008年リリース、デビューアルバム。
メタルコアにシンセを積極的に導入したのはこのバンドが初めてってわけでもないですが、"エレクトロコア"とか"トランスコア"、日本では"ピコリーモ"といったジャンルを確立させたのは間違いなくこのバンド。
Rise Recordsの象徴的バンドでもあり、1stから3rdまで同レーベルからリリースしたものの、3rd発表直後の2012年初頭にRise Recordsを離脱。セールス的な失敗はないため、何があったのか気になる…
メタルコアとして見るならマイルドなサウンドだし、ブレイクダウンの強烈さからスクリーモと呼ぶには抵抗があるし、かといってポストハードコアスタイルとも一線を画した位置に立っているという曖昧な音楽性が逆にスクリーモとメタルコア両方のファン層へアピールすることとなった上、大胆にトランス/ダンスミュージックのエッセンスを取り入れたサウンドによって新たなファン層も開拓することとなった画期的作品。
この作品の登場によって"Attack Attack!"の名は最先端のスクリーモ/メタルコアとして歴史に刻まれた。
個人的には2ndのシリアス/メランコリックな叙情メタルコア路線がバンドの最高峰だと思うが、このアルバムによって切り開かれたシンセ大量フューチャー型メタルコアというスタイルを作り上げた功績は認めざるを得ないし、オリジネーターとしてフォロワーを大量に生み出した歴史的意義も非常に大きいと思う。
メタルコアとして見た場合、メタリックでヘヴィなリフワーク、グルーヴ感のあるリズム系などのバッキング、強力なブレイクダウンやモッシュパートという方法論を大部分で踏襲した要素で構成されている。しかし、狙ってのことなのかどうか分からないが音像的には非常にマイルドなプロデュースをされており、後述するシンセやエモいというかチャラい要素と相俟ってバランス的には絶妙な見せ方が特徴的でもある。
最大のアピールポイントでもありこのバンドの(このアルバムの)象徴とも言うべきシンセサイザーは、芯の太い硬質なメタルコアサウンドには不釣り合いなほど"チャラい"音となって現れている。キラキラと輝くような音色や、トランス系のディスコちっくな音、ファンキーさを狙ったものなど様々。シンセはほぼダンサブルな方向へ導く要素として使われており、それが結果として"チャラい"と表現される音楽性を形作っている。
徹底的にシンセはダンサブルなので、硬派なメタルコアファンは無視しておいた方がいいだろう。
2ndあたりでは叙情性を強めていたのだが、この1stで見られるのは単に"エモい"と言えるメロディアスさ。個人的には叙情性は大好きなのだが、あまりそれを強く出しすぎるとダークな雰囲気を醸しだしてしまって必ずしも大多数に受け入れられるわけでもないと思う。こうしたエモさはこのマイルドなサウンドにマッチしていると思うし、スクリーモ/メタルコアの両ファン層にアピールするには正しい方向性だとも思う。
ちなみに、この1stでスクリームを担当しているのはAustin Carlileだが、このアルバムリリース後に脱退(解雇?)されており、2nd以降はキーボード奏者のCaleb Shomoが担当することとなる。
Stick Stickly
アルバムのリーダートラックで、Attack Attack!の名を世界に知らしめた名曲。強烈なブレイクダウンからピアノの旋律に流れる場面と、後半のブレイクダウンからトランスパートへ流れる展開が大好きです。
Interlude
アルバムのちょうど中間にあたる7曲目にコレを入れちゃうのが、本人達のダンスミュージックに対する本気度が伺えていいですね。完全インスト曲ですが、8曲目のイントロ部分も兼ねたアレンジになってます。
Catfish Soup
ベースは例によってメタルコアなのだが、シンセは別世界へ行ってる楽曲。チャラさと硬派さが同居してていいし、2ndへ通ずる要素と見られる途中に挿入されるシンフォニックアレンジも大好き。
このアルバムは多くのフォロワーを生んだ意欲作だったがバンドは2ndでこの方向性を更に進化させて、ダンサブルな要素は残しながら叙情性大増量のメランコリック・メタルコア化して世間を驚愕させた。
個人的には2ndがバンドの(現時点では)最高傑作であったと思う。
3rdに関しては…何だったんでしょうね、あれは。