イタリア出身のメタルコアバンドの2011年発売3rd(改名後の1st)。
イタリアのメタル界は層が厚すぎるね。本国内では需要があまりないっぽいけど、Disarmonia Mundiはもはやイタリアのメロデス界を牽引する大御所と言っていいと思うし、Dark Lunacyは4thは微妙だったものの個人的に耽美系メロデス最強バンド、他にDestrageとかNeptuneなどのモダンメロデス勢から、StigmaとかLiving Corpse等のメタルコア系、アマチュアレベルではLullabies To DieとかValkyriaなんていうハイクオリティなバンドも現れていて、今後の欧州メタルシーンの一大本拠地となりそうな勢い。
そんなイタリアでメタルコア界の中心となりそうなのがこの"Tasters"
2ndまでは"Taster's Choice"の名で活動しており、1stは日本国内盤も発売していた。2ndは国内盤なしで一部の国のみで発売。その後バンド名をコーヒーメーカーのネスレ(ネスカフェ)からクレームを受けたことでTastersに改名。と思ったら、メジャーレーベルのNuclear Blastとの契約をゲットして、結成は1999年なので活動12年目にしてついにメジャーレーベルからのワールドワイド・デビューに至る。
2005年発売の1stは泥臭い系のメタルサウンドをグロウル主体に歌いあげて、サビではノーマルvo、時折ラップパートを盛り込んで…あぁ、Nu-Metalですね(笑。全体的にグルーヴィなノリが特徴の音楽性だった。正直、微妙な印象のアルバムだったよね。3rdに繋がる要素を探すのが難しいよな、これは。
続く2ndアルバムは2009年。これはYouTubeで聴くと1stから音楽性を変えましたね。モダンメロデスっぽくなったというか、3rdの方向性を考えるとこの2ndは重要な通過点かな、と。ノーマルvoパートのメロディの作りこみは現在にも繋がるかなとは思うけど、他は共通点を探せと言われても無理っぽい。
この2nd、現在では入手不可になっているのが惜しい。欲しい! どこかで再発しないかな。
こんな感じで、アルバムの発表間隔が長いのも理由かもしれないが、アルバム毎に音楽性を変化させてきた末の本作3rdでは再び音楽性をチェンジ。音楽性は明らかに今風のメタルコア/スクリーモ路線であるヘヴィ&アグレッシブな作風にトランスコアっぽいシンセを載せたものがベース。そこに2ndで見せたモダンメロデス風味を若干注入。グロウルのパートは強烈なアグレッションを伴った突進力を見せながら、クリーンvoを使ったサビのパートは憂いを帯びた叙情性豊かなメロディ。その落差の激しさが魅力であり特徴。更に多彩なリフワークを組合わせたブレイクダウンパートの強靭さと、時にシアトリカル、時にトランス的なシンセを交えた何でもアリ系サウンドながら、それを非常に高度なアレンジでまとめ上げた傑作と言えると思う。
2011年度のベストにも選出したこのアルバム。2011年メタルコア界最大の衝撃です。
まずは、1stシングルとなった"Please Destroy This World"
獣の如きグロウルを轟かせるパートは全編がハイテンションで進行。シンセを含めた各楽器とvoが音の隙間を全て埋めるかのようにアホみたいな分厚いサウンドで襲ってきます。怒涛の勢いとは正にこのこと。
対してノーマルvoのサビは、一転して落ち着いたメランコリーなメロディをぶちまける。落差の激しさたるや、全く別の曲を一つにまとめてしまったのではないかという印象すらある。
シンセがいろいろな意味で大活躍。昔のユーロビート系を思わせるオーケストラヒット的音色からピアノの音色まで様々。これだけシンセをフューチャーしてるのに全然トランスコアっぽくないのがイイ。
"Sleeping With Spirits"は随分とメタルコアっぽい1曲。
出だしはデスコアっぽい掛け声。そこから重めなリフとシンセを絡めて進行。基本はトランス/サイバー系のシンセサウンドですが、時折ピアノの音色を配置したりするのがこのバンドのセールスポイントじゃないでしょうか。"Please Destroy This World"ほどグロウルパートとノーマルvoパートの落差はないですが、全編を覆うアグレッシブな音圧とメランコリーなサビはこの曲で健在。12年の活動は伊達じゃねぇな。
モダンメロデス方向の"Fight If Your Heart Is Broken"
2ndの路線に最も近いのがこの曲かもしれない。サビの盛り上げ方がいかにもメロデス的。ノーマルvoも使っているのにサビで使ってるわけじゃないんだよね。基本グロウル率高め。シンセもそれほど前には出ていないので、本作では若干異質な楽曲。でも、メロデス好きな俺的にはこの曲はイイなと思った。
サウンド的なヘヴィさはGのダウンチューニングの効果かと思われるが、デスメタリックなグロウルの声質とスウェーデン系のメロディック・デスメタルに学んだような突進力は圧倒的。各楽器の音圧が非常に厚く、怒涛の勢いで攻めこんでくる感じ。全編で叙情的なメロディが効果的に配されて、メランコリーな印象を受ける。特にサビメロの切なさはこの手のバンドでは最高クラスで、全体的に見て起伏の激しさが目立つ。
シンセの使い方のセンスが良いのも魅力的。トランス/サイバー系一辺倒ではなく、アトモスフィックであったりシアトリカルであったり、印象的かつ効果的に楽曲を盛り上げていると思う。
イタリア系のメタルバンドらしいメロディ重視型なのがイイです。
Bring Me The Horizonが好きなら完璧にマストなアルバム。他、モダンメロデス寄りのメタルコアが好きなら買って間違いはないでしょう。特にSonic SyndicateとかUniversumあたりが好きなら是非。