英国産シンセコア/メロディック・メタルコアバンドの2011年リリース2ndアルバム。
2010年にEP"Life Gone Wild"をリリース。そこではSkid Rowのロックアンセム"Youth Gone Wild"と"18 & Life"を忠実にカバー。他に1st収録曲のリミックスとデモバージョンが収録されていた。
このアルバムも1stと同じくSumerian Recordsからリリース。
何かと比較されがちなアメリカのAttack Attack!とは、"ピコリーモ vs シンセコア"とか、"米国 vs 英国"とか、"Rise Records vs Sumerian Records"、果ては"AA!(感嘆符付き) vs AA"なんて略称まで対立構図があるくらいですが、実は周りで言われるほど音楽性が似ているわけではないのが面白いところ。
※Attack Attack!については現在Rise Recordsとの契約を解消した模様です。
現在のSumerian Recordsでの稼ぎ頭と言っていい存在で、本作はUSチャート9位まで昇り詰めた。
英国のバンドだが、本国よりも圧倒的にアメリカでの方が知名度も人気も高い状態。
音楽性は引き続きシンセコアとしておきたいところだが、前作と比較すると大方の予測に反して明らかに重く激しいサウンドに変化しているのが本作の特徴。トランス/ダンスミュージック的な部分はほとんど排除され、よりメロディック・メタルコアとしての立ち位置が鮮明となった。比較対象のAttack
Attack!の3rdに関しては「1stと2ndは何だったのか?」と問いたくなるほどの重量路線だったが、そこまでの変化ではない。
元々がシンセの音色やメロディよりもギターサウンドに拘ったバンドだけに、こうしたヘヴィな方向への進化についてもマイナス的な部分は一切無く、逆に魅力的な成長の仕方になったなというのが正直な印象。
実際のところ、1stでのトランス/ダンスミュージック的シンセサウンドは確かに面白い要素ではあったけれど、突如挿入されるそのパートがとってつけた感アリアリで浮いていたのは事実。本作でシンセが完全にバッキング面でメロディを補完する役割に回ったことで音に厚みも統一感も生まれるようになった。
ギター面での魅力も完全に前作を上回っており、メタルコア的なグルーヴ感を生み出すリフワークと英国モダンメタル…いわゆるBFMV的ラウド&メタルなバッキング面もより強靭に進化を果たした。リード面も前作以上にメタリックかつメロディアスになり、叙情的な部分も当然のように増強されている。
展開面はドラマチック&スリリングの一言。アグレッシブに走るパートと重く落とすブレイクダウンの切り替えも見事だし、一気に目の覚めるような"静"のパートの盛り込み方も自然と楽曲に溶け込んでおり、そこから再び疾走したり重く落としたりと多彩な攻め方をしてくる。もちろんクリーンvoパートの作り込みも成長の跡が見えて、メロウに落とすだけではなく爽快な疾走感やキャッチーなメロディを詰め込んでいる。
イケメンなヴォーカリストはスクリーム&クリーンを両方操り、クリーンに関しては伸びやかではあるけれど至って普通にありがちな声質。対してグロウルは顔に似合わず極悪系の低音スクリームなのが特徴。
アルバム全体を通して非常にクオリティも高く捨て曲は一切ない。
Dear Insanity
イントロから強烈な絶叫スクリーム。非常にアグレッシブな楽曲で、1曲目の小イントロに続く本編スタートにアルバム全体の路線を明確に示したこの曲を配置したのは成功だと思うし、何よりカッコイイですね。
Closure
続く3曲目のこの曲は前作の方向性を継ぐ曲でもあるし、アルバムで唯一と言ってもいいトランス的な要素を持つ楽曲でもある。ノリもいいし、トランス的シンセも前作より曲への融合度は確実に高いと思う。
ブレイクダウン→トランス的シンセ→メロディアスなクリーンvoパート→エンド、という流れは大好き。
Someone, Somewhere
スクリーモとかポストハードコアっぽい曲で、ウリでもあるブレイクダウンを無くしてしまった曲。それだけにメロディアスだしほのかなメロウさが感じられて良い。バンドとしては実験的な曲だと思う。
Breathless
2010年リリースのEPで先行リリースされていた曲。この曲、やっぱりいいな。サビメロがキャッチーで秀逸すぎる。BFMV的なところとメタルコア的な部分が上手くミックスされていて聴きやすいと思う。
Reckless & Relentless
ドラマチックな曲で、シンセコアとしてはWe Came As Romansと方向性の近いスリリングさがある。サビの作り込みはこのバンドらしいメロウさがあっていいね。アルバム中でもシンセの活躍が高い方かな。
このバンドの1stが好きなら絶対に買っておくべきアルバムだし、シンセ多用型のメタルコアファンは必聴とも言える傑作盤。メロディック・メタルコアとしての質も非常に高いので、メロディ重視なら是非。
トランス的要素はほぼ無くなったので、トランスコアのファンは見送った方がいいとは思うが、トランス要素があるかないかに関係無く、全てのメタルコアファンに聴いておいて欲しいマイルストーン的アルバム。