ペンシルヴァニア出身のメタルコア・バンドの2008年発売1st。
広い意味で言えばメタルコアで間違いないのだが、転調や変拍子を盛り込んだ展開が複雑で、カオティック・コアほど病的ではないが、その音楽性は一種独特の世界。テクニカル・コアとでも呼びたくなる作風。
全体的にはAugust Burns Redっぽいな、という印象。テクニカル系と言っても唐突な転調が多用されているわけでもなく、変拍子を用いた不思議系なリフワークを爆走激烈メタルコアの中に上手く取り込んだ感じだ。
そんな複雑で起伏の激しい楽曲展開の上に、新世代メロデス勢ばりの叙情メロディをぶちまけながら疾走させるという、あまりにも欲張りな音楽性。それを実現す る圧倒的なテクニックも凄まじいのだが、楽曲として無理・破綻無く構築する作曲・アレンジ能力も新人の域を遥かに超越している。
voに関しては全編シャウト系のグロウル。クリーンvoは無し。
1曲目のNo Horizons
イントロの、ほんの出だしの部分だけはメタリック。そこから一気に複雑なリフと変拍子を繰り出して、独特の世界観に引きずり込んでいく。目まぐるしく変わる展開に頭も体も追い付かない感じで、乗るに乗れない(笑
時折挿入される叙情メロディが、この病的世界のオアシスだな。
2曲目のMonuments
病気を克服してメタルコア化したMeshuggahですか?(笑。
これも攻撃的に突進してるのに、乗るに乗れない不思議なリフワーク。
ライブで観衆はいったいどんな感じで聴いてるんだ?
6曲目のArchiteuthis
アルバム中では珍しくかなり普通なメタルコア系な曲。
変拍子を多用してるのはもちろんなのだが、起伏に関してはそれほど激しくなく、アグレッシブさや疾走感を前面に押し出している楽曲。
叙情疾走メロディも豊富で、1曲目と双璧のアルバム中最強楽曲か。
エモ/スクリーモっぽい部分は全く無いメタルコアで、独特な楽曲展開でどんどん引き込まれていく不思議な魅力が溢れるアルバム。テクニカルな部分が主体ながら、そのテクニックをひけらかすような鼻につく部分が感じられないのは好印象。アレンジ能力の上手さはメタルコア界屈指かもしれない。
疾走曲中心というか、それオンリーなのも気持ちがいいポイント。
あまり似たバンドが思いつかないため、こんなバンドが好きな方に…みたいないつものオススメの仕方が出来ない…。
ただ、これはヤバイくらいにハマる。
メタルコア・ファンならこれは聴いておくべき。
2009.04.09初出