米国産メタルバンドの2011年リリース5thアルバム。
1stはAs I Lay Dyingタイプのオーソドックスなメタルコアだったが、Metal Blade移籍後の2004年リリース2ndからクサメロ資質を開花。3rdで硬質なメタルコア化して「普通のメタルコアバンドに逆戻りするのか?」と思わせ、2008年リリース4th"The March"でクサメロファンを絶叫・歓喜の渦に巻き込んだ。
そして本作で一気にモダンメロデス化した(笑
4thまではリフやリズム系、特にブレイクダウンやモッシュパートといったメタルコア的な部分が明確に存在していたのだが、本作ではそういった要素が変化・減少・消滅したり、ブレイクダウンひとつとってもそれが展開の起伏のように感じられ曖昧になったことで、バンド自身が元来持っていた叙情メロディ要素がクローズアップされ、結果的にモダンメロデス的なサウンドへ進化…というか退化した(もちろん良い意味で)。
たぶん本人達はメロデスを目指していないと思うし、望んでもいないと思う。
メロディ要素を突き詰めていったら、たまたまメロデスっぽくなった…という感じなのだろう。
4thの…というより"We Are Not Anonymous"を正常に進化させたアルバムといった感じの本作。
ブレイクダウンやモッシュパートの見せ方がメロデスとメタルコアを分けるポイントの一つだと思うが、このアルバムではその部分の見せ方が展開の起伏を作り出す要素として楽曲内に溶け込んだことによって、メタルコア的なブレイクダウンが変質しているように思う。それがよりメロデス的に感じる一因でもある。
メロディック・メタルコアとモダンメロデスの間に立つサウンドと言っていいだろう。
メタルコアのビート感をかすかに残しながら北欧メロデス的なギターメロディを載せて疾走するというスタイルはUnearthが初めてでもなければ大御所ってわけでもないが、こうして完璧な形で融合させてUnearthタイプとしてまとめ上げたのは素晴らしいと思う。メロディック・デスメタルコアとでも呼ぶか?
やはりポイントはメタリックかつ叙情的なギターメロディだろう。メロデス的に言えば適度なクサさだがメタルコア界にあっては相当にクサいメロディで、流麗なフレーズをバンバンと放出しまくっている。
Shadows In The Light
メタルコアのビート感にメロデスのメロディを融合したような曲。Unearthタイプの楽曲とはこういう曲のことを言うのだろう。この曲でもクリーンvoを導入しているけど、メロディアスさを引き立てるのに良いアクセントになっていると思う。ブレイクダウンの残滓らしきものは存在するが、これメタルコアなのか?
Last Wish
リフやリズム系に若干のテクニカルな要素を導入したメロディック・メタルコア楽曲。バンドとして久々にノーマルvoを使ってきたのでビビった。エモくないけどメロい。後半のギターソロがいいね。
The Fallen
4thのWe Are Not Anonymousで驚喜した自分にとって本作の最大の見せ場がこの曲だと感じた。
アホかと思うほどクサいイントロで泣ける。
楽曲展開の中に緩急・静動を盛り込んでよりメロディアスに振ったことによって、メタルコア的なブレイクダウンは変質して展開の起伏として楽曲内に融合されたと思う。中盤から先の展開も大好きなところ。
Unearth的メロディック・メタルコアの正常進化アルバムと言っていい快作。
メロディ重視派のメタルコアファンや、特にメタルコアというジャンルのバンドを一括りにしてどれも同じような曲と蔑んでいるメロデスファンにこそ聴いてもらいたい強力盤と言える。Unearthがメタルコアというジャンルの中でも異質なメロディを非常に高いクオリティの中で披露しているのだと分かるはずだ。