米テキサス出身のメタルコア/スクリーモバンドが2011年にリリースした3rdアルバム。
HOWLING BULLの公式バイオによると、バンド名はエペソ書の5:14節からインスパイアされたそう。本作のコンセプトは前作"Son Of The Morning"から連なる物語で、神と悪魔の最終戦争後に人々がどのように考えて行動するかを描いたものらしい。…というわけで、ガッチガチのクリスチャン・メタルバンド。
ぶっちゃけて言うとメタルコアではなくスクリーモあるいはポストハードコアバンドなのだが、テクニカル系のリフワークといいリズム隊が変拍子を多用しているあたりはプログレを思わせる。本作においては以前と比べてより複雑なリズムパターンになって、ギターのリフもテクニカルさを増したように感じる。
また、ギターメロディがどうのというより全編を覆う叙情性も特徴的。哀愁とか切ないを通り越して悲痛と感じる時もあるほど。それでありながら、そこそこの攻撃性というかアグレッションもある。そこはメタルコアじゃないのでブルータルっていうにはほど遠いが、その叙情性を湛えたアグレッシブさとポストハードコア系には珍しく"慟哭"という言葉を想起させるスクリームヴォイスで独特の音楽世界を構築していると思う。
ただ、スクリームvoもクリーンvoも味があるとか表現力が豊かかと聞かれたら微妙。スクリームは中高音域の声質で絶えず絶叫してるだけだし、クリーンvoはリードギターが兼任してるらしいがこちらもハイトーン系ではなくて中音域で切々と歌う感じ。要するに、ヴォーカルの音域の幅が狭いんだよね。まぁ、そうしたヴォーカルの状態だから音楽性と相俟って"慟哭"という言葉が思い浮かんだのかもしれないけど。
"Endseekers"
重いドラミングと不穏な雰囲気のギターメロディ、それにピロピロとしたギターリフ(笑。ひたすら重めに進行して時折疾走という感じ。ノーマルvoのパートはほとんどアクセントと言ってもいいほど僅か。
"Hush Yael"
いきなり歌いあげるクリーンvoから入ったのでオルタネイティヴ系のメタルかと思ったら、その後は普通にこのバンドのサウンドでした。基本ミドルで重めに攻めて、時折疾走するのも同じ。ただ、クリーンvoパートが叙情的かつエモくていい。途中でイントロで歌い上げたフレーズがリフレインする展開も好きです。
"In The Wake Of Pigs"
アルバム中ではこれでもシンプルな方かな。この曲、ギターメロディがすごくいい。クリーンとスクリームを絡めたサビでのギターメロディも好きかな。そのサビの後に軽く疾走するのも印象的。
元からリズム系の複雑さは定評があったが、ギターも含めて全体的によりプログレッシブな音楽性になったことで、ポストハードコア化したWithin The Ruinsを思わせるサウンドに進化・変貌した。
残念なのは、プロデュース的に音圧が厚すぎること。もう少しリズム系のサウンドを引いて各楽器間のサウンドバランスを整えればギターのリフやリードのメロディがもっと魅力的に感じられたように思う。
テクニカル系、あるいは叙情系メタルコア好きにオススメの良盤ですね。