アメリカ出身のメタルコアバンド、2008年リリースの1stアルバム。
2012年現在で4thまでリリースされているが、1stから3rdまではRise Recordsでのリリース、4thでレーベルを移籍してArtery Recordings所属となった。メンバーチェンジの激しいバンドで、2003年結成からのオリジナルメンバーはリードギタリストただ一人。ヴォーカリストも本作と2nd以降では違うし、そもそも本作ではドラマーが存在しておらずプロデューサーのJoey
Sturgisがプログラミングをしているほどだ。
サウンド的には叙情系メロディック・メタルコアに属していると言っていいだろう。
とてもRise所属とは思えないほどのブルータリティを撒き散らしているのが特徴的で、低音のスクリームヴォイスと相俟って非常に強靭なサウンドを実現している。攻撃性を前面に押し出してヘヴィネスが強調されたミドルパート、そこから強烈な落差のブレイクダウンパート。メタルコアというジャンルの中で見ても相当にヘヴィ&アグレッシブなサウンドが印象的で、"エモさ"というような要素は一切存在しない男らしさ。
そうした重く激しいメタルコアサウンドをベースに、全体を叙情的なメロディでコーティング。第一印象はブルータリティのある音楽性でも、エモーショナルなフレーズがあちらこちらに散りばめられているのにすぐに気づくはずだ。スクリームパートでヘヴィさを表現してクリーンvoパートのメロディアスさで落とすというメタルコアバンドが多い中、このバンドはクリーンvoを使用していないのでそういったメロディアスさの見せ方はしておらず、もっぱら疾走パートをメロディアスに展開させるというスタイルをとっている。
キャッチーさもエモさも無縁のサウンドだが、ヘヴィさとメロディアスさのバランスは非常に良い。これがデビューアルバムなのだから当時は衝撃的だった。最初はその重く激しいサウンドでとっつきにくく感じても、エモーショナルなメロディの連続にすぐに耳が奪われてしまう。"Last Dying
Breath"がアルバムのハイライトとも言えるが、単純なヘヴィネスを追求したパートなどブレイクダウン以外に存在しないんじゃないかというぐらいに全編が叙情メロディで覆われている。ドラマチックな楽曲展開も見事と言う他ない。
このレビューを書いている2012年夏の時点で4thまでリリースされているが、2ndの路線は1stと同様ながらもヴォーカリストがチェンジした影響なのかクリーンvoが導入されているし、3rdあたりからはポストハードコア寄りのメタルコア、4thに至ってはキャッチーさを前面に押し出したような"メタルコアっぽいもの"になってしまったので、強靭な叙情系メロディック・メタルコアを望むならこのアルバム一択となるだろう。
メロディック・メタルコア好きなら必ず聴いておくべき良盤である。