アメリカ出身のメタルコアバンド。2012年リリースの6thアルバム。
2010年の5th"The Powerless Rise"に続く約1年半ぶりの新作。
デビューアルバムはインディーズ系のPluto Recordsから2001年にリリース。2003年にMetal Bladeと契約し、2ndアルバム"Frail Words Collapse"を制作。その後も現在に至るまで同レーベルに所属。
3rdアルバムリリースまで、ベースとギターのメンバーが流動的だった(共に5〜6人がチェンジ)。
AILDと言えば個人的には2nd"Frail Words Collapse"と3rd"Shadows Are Security"なわけで、特に3rdの破壊力は凄まじすぎた。メロディック・メタルコアの教科書とも言うべき傑作で、メタルコアを聴く上で避けては通れないマイルストーン的アルバム。アグレッシブかつブルータルなのはもちろんのこと、全編メロディアスでキャッチーさも適度にブレンド。"The
Darkest Night"はメタルコア史上の不朽の名曲だろう。
その後の4th"An Ocean Between Us"や5th"The Powerless
Rise"はバンドのヘヴィさを強調した作品となっていて、路線としては1stや2ndを更に重めなサウンドへ進めた感じ。個人的に思うのは、アグレッシブさやブルータリティに関してはバンドの軸はブレてないと思うしメロディアスさもよりオーソドックスなヘヴィメタル然としてる気はして悪いとか駄作と言うつもりではないけれど、3rdで見せたある意味ポップと言っていいほどの"キャッチーさ"はすっかり影を潜めて、"普通の"メタルコア的クリーンvoパートとなっていた。
まぁ、1stから5thまでで3rdが異端とも言える作品だったのかな、という気がしないでもない。
本作の路線もサウンド的には4thや5thの方向性を推し進めたメタルコア。ブルータリティに主眼を置いた重めなリフワークをベースとして、時折軽快かつアグレッシブに疾走、クリーンvoの歌メロパートをアクセントに使うというパターン。最近のメタルコアバンドはよりヘヴィかつブルータルなスクリームパートと、よりメロウな歌メロパートで構成されているのだが、それから比べればブルータリティは抑えめでアグレッシブな疾走パートやブルータルなミドルパート共に徹底的にメロディアスであるのが特徴。メタルコアバンドではあるけれど、そのメロディアスさ故に限りなくオーセンティックなヘヴィメタルに近い作風となっている。
一概にメロディック・メタルコアと言ってもハードコアをベースにメロディアスに仕上げていたり歌メロパートを強調しているバンドと違って、メタルコア的なリフワークやリズムパターンを残しつつより普遍的なヘヴィメタルサウンドを実現しようとしている姿勢が凡百のメタルコアバンドと決定的に違っている。一般的なヘヴィメタルファンからすればスクリームヴォーカルを異端視して受け入れがたいのかもしれないが、バンドの実践しているサウンドスタイルからは"現代的ヘヴィメタル"はこれだと言っても過言ではない。
バンドのスタイルとして、スクリームパートから歌メロパートへ移行するに際して唐突なメロディの変化を起こさないというのも一貫しているポイント。そのため、スクリームからノーマルへのvoの移行にしても楽曲的な違和感が全く無い。アルバム中でも起伏の激しい曲である"Overcome"にしても、スクリームパートから歌メロパートへの遷移は非常にスムーズで流麗。そうした面も現代的ヘヴィメタル然としている所なだろう。
また本作でもシンセに頼るようなことはせずにギターメロディで勝負しているのも好感。ツイン・リードのギターサウンドは変にテクニカルな方向へ走ろうとせず、それでいながらさり気なく難度の高いフレーズを弾いていたりもする。もちろん安定感は抜群。ギターソロを搭載しているのもバンドのアイデンティティ。
4thと5thでしっくりと来なかったが、本作は久々にAILDの凄みを感じさせる快作。
メロディック・メタルコアとしての正しい形であり完成形。また、現代的ヘヴィメタルを聴くことの出来る数少ないアルバムでもある。AILDファンなら安心して聴ける。それ以上に、"メタルコア"というジャンルを異端視するオーセンティックなヘヴィメタルファンにこそ聴いてもらいたいアルバムでもある。