イタリア産メロディック・ハードコア/メタルコアバンドの2012年リリース1stフルアルバム。
勢いの止まらないイタリアから再び強烈なメタルコアバンドが出現!
インディーズでこれほどのレベルのバンドがゴロゴロ出てくるイタリアのバンドレベルって…
ローカルなインディーズバンドなのでバイオ等を調べようと思ってもFacebookくらいしかないのが現状だが、その少ない情報から読み取るにバンド結成は2009年のことで、同郷のTastesのヴォーカリストDaniele Nelliに発掘された。このアルバムのプロデュースもDaniele Nelliが行なっているほどの肩の入れよう。
メンバーはツインギターを含むオーソドックスな5人組。ヴォーカルはスクリームもクリーンも操るみたいだが、おそらく他のメンバーでクリーンvoを担当している人がいるはず。それと、かすかにkeyも使われているので、メンバーの誰かもしくはセッション&サポートでkey奏者も存在するはずだが詳細不明。
音楽性はTastersに近い部分も無くはないが、それよりは同郷のLullabies To Dieに近い。Tastersはメタルコアの枠に囚われないアグレッシブなエクストリーム・メタルだったが、このバンドの場合はよりメタルコアの方法論に沿った作風。Lullabies To
Die系統のスクリームパートにTastesのメロウなクリーンvoパートを載せたような感じだ。クリーンvo無しの曲に関しては叙情メタリック・ハードコアなサウンドになっている。
基本ハイテンション&アグレッシブに突っ走って、強烈なブレイクダウンやメランコリックなクリーンvoパートで華麗に落とす、というスタイル。叙情性の高さは相当なもので、スクリームパートは激しいリフ主体で進行させながらも時折挿入されるシンセやギターのフレーズで叙情性を演出して、クリーンvoパートでは凄まじい落差のメロウさをぶちまける。正に現代イタリア産メタルコアらしい作風と言える。
面白いのは、インダストリアル的なノリやテクニカルな要素を融合していることだろう。このあたりは既存のメタルコアの枠に囚われないTastersの精神性を引き継いでいるようにも感じる。
全体的にダイナミックな展開の楽曲が多い。
Foundations
Tastersよりメタルコア感は強いが、クリーンvoに入ると一気にメロウに変化する様はTastersそのもの。メタルコア的なところから大きく外れないでメロディアスな要素を持ち込むのがセンス高いと思うな。
Misplaced
メロディック・ハードコアらしく突っ走りながらブレイクダウンの落とし方もよく練られていて良いと思う。途中で疾走するパートがアクセントになっている。スクリーム一本ながらダイナミックな展開の曲だ。
The Departure
ハイテンション&アグレッシブなvoが気持ちいい。途中でロックなフレーズを持ち込むセンスの高さは相当なもの。クリーンvoの使い方が少し甘いので、これはスクリームのみで良かった曲じゃないかな。
問題はプロデュースなのかスタジオなどの録音状況なのか分からないが音質が悪いということだ。リフやバッキングのギターサウンドばかりが前面に立ちすぎて、魅力的なフレーズを弾いているリードギターやシンセのサウンドがバックに沈んでいる。そのため、せっかくのメロディアスさが生かされていない。
楽曲全体のクオリティが整っていないのも問題で、それは特にクリーンvo無しの曲に顕著に現れていて、見せ場となる要素が少ない。スクリームオンリー、特にミドルテンポの楽曲となるとブレイクダウンの見せ方・落とし方が重要だと思うが、クリーンvo無しになると一本調子な印象ばかりが目立ってしまう。
ただ、基本となる作曲センスの高さは相当なものなので、今後Tastersに引っ張られるようにイタリアのメタルコア界を代表する存在となるポテンシャルは秘めている逸材。今のイタリアの凄さを感じるバンドだ。