ドイツのエクストリーム・メタルバンドが2011年にリリースした5thアルバム。
1stは自主制作、2nd"Earth Revolt"からLifeforceにてリリース。
メンバーはSebastian Reichl(ギタリスト兼キーボーディストでありほぼ全曲の作曲とプロデュースを行なっている)を中心にTobias Graf(Dr)が結成以来のオリジナル・メンバー。Sabine Schererは2ndでキーボード兼クリーンvoとしてゲスト参加(4thアルバムから正式に加入)。ベースのJohn
Gahlertは2009年からの加入で、元々はドイツのメロデスバンド"Fall Of Serenity"のヴォーカリスト。John Gahlertに関しては、オリジナルのデスvoであるJohannes Premが5thアルバムリリース後に脱退した影響で、現在はデスヴォーカリストにスイッチしている。空いたベーシストの座はFerdinand Rewickiが務めている(John
Gahlertが連れてきたのかもしれないが、こちらもFall Of Serenityのメンバー)。2013年にはギタリストのGert Rymenが脱退しており、後任は不明(Ferdinand Rewickiがギタリストにスイッチする可能性もある…かな?)。
ちなみに、1stで一部女性クリーンvoが使われてるが、これもSabine Schererではないかと。
最初期は北欧…それもスウェディッシュ系のメロディック・デスメタルをやっており、気持ち程度にクリーンvoが使われているがモダンな要素はほとんど無く、またシンフォニックなシンセも入っていてもシンフォ・メロデスというほどでもなく、ただただ"良いメロデスアルバムだなぁ"という印象でしかない。
2ndの"Earth.Revolt"も基本はメロデス路線だったが、"Awakened By Sirens"あたりの楽曲で今に至る音楽性が形成されたように思う。いわゆる、フィメールヴォーカル主体にしたモダンなエクストリーム・メタル。デス声はあくまでもサブ扱いのアクセント。楽曲展開も起伏を重視してキャッチーなサビメロを配す。
3rdではメロデス路線から外れて…かといってモダンかというとそうでもなく、もっとストレートなアグレッションを前面に押し出した上で、Sabine Scherer嬢のキャッチーな歌メロで展開の強弱を表現するスタイルに転換。Deadlock的なエクストリーム・メタルはこの3rd"Wolves"で確立されたと言っていい。
で、個人的に大傑作の4th"Manifesto"では、より激しく、よりキャッチーに進化。実際の音楽性は3rdを受け継ぐもの。メロデスでもメタルコアでもないDeadlovk的エクストリーム・メタル。
さて、そうした経緯から生まれた本作"Bizarro World"
ぶっちゃけ、前作"Manifesto"的なサウンドスタイルを期待すると肩透かしを食う地味盤。
Deadlock的な面で言えば、メロデス畑出身らしいアグレッション&ブルータリティを持つデス声パートと、女性ヴォーカルのアンニュイ感のある詩メロパートを併せ持ったバンドらしさは間違いなくある。
前作から引き続き歌メロパートではピアノ音も大々的にフューチャー。そのため、Sabine Schererのヴォーカルとあわせてアンニュイ感は相当にアップ。その分、大方の想像通りデス声パートは減少。…というか、前作にも言えることだが、Sabine
Scherer嬢の歌メロパートをいかに活かすかを計算してデス声を使っているんじゃないかという感じすらある。そうした意味ではもはやデス声は歌メロの引き立て役にすぎない。
ギターに関してもリフでメロディを組み立てていくスタイルはそのままだが、よりシンセサウンドとヴォーカル…つまりSabine Scherer嬢の声でメロディを作り上げるスタイルが明確になった。特に8曲目"Renegade"あたりに顕著に表れている。おそらく今後はこうしたスタイルを主体としたサウンドへ進むだろう。
シンセ的にはどんどんフューチャー度はアップ。本作ではツインのギターながらもピアノ音からピコピコサウンドまで大活躍。シンセが楽曲の色合いを支配するようなデジタル系エクストリーム・メタルである。
個人的には前作を超えるほどでは無いと思うが、1・4・6・8・9曲目あたりに惚れている。
特に8曲目"Renegade"はデジタル感のあるシンセを強めにフューチャーして、ダンサブル的な要素も取り入れたりしているが、Sabine Scherer嬢のエモーショナルな歌メロもしっかり取り入れている意欲作。
6曲目"Brutal Romance"はDeadlock節全開でノリの良い楽曲でイイと思う。