Sagas/Equilibrium

ドイツ出身の、シンフォニック・エピック・ヴァイキング・デス/スピードメタルというジャンルらしいバンドの2008年発売2nd。

20歳そこそこの若者達とは思えぬ堂々たるエピック・ヴァイキング・メタル魂を見せつけた1stから約3年。1stでシーンのトップに昇りつめたと言っても過言ではなかったが、この2ndでもはやジャンルの頂点を極め、絶対皇帝として君臨したんじゃないかという出来だ。
音楽的には前作同様スピードメタルをベースとしながら、前作では全編で音圧が厚すぎた感もあって各楽器の音像がベッタリとしていたんだが、この3年で楽器の音像のこだわりも上達したのか、緩急の使い方も含めて、楽器の音を大幅に整理して耳残りのいい音になった。
そのせいもあって、各楽曲の個性が際立ったなぁ、というのが第一印象。楽曲の中の見せ場というか聴き所も掴めるようになって、前作でのネックだった各楽曲の『似てる感』が大幅に減少した。
やはり、そのあたりは大人になったんだろうな。

楽曲的には決して大人しくなったわけではなく、スピードも前作同様に極め尽くされているし、アグレッシヴさも全く衰えていない。
ブラストビートも前作以上に取り入れられて、メロデスというかシンフォニック・ブラックメタルか？という感じだし、voのデス声も前作以上にパワフルに聴こえる。ブラストが増えた分、プロデュース的にツーバスの音が奥に引っ込んだのは良かったんじゃないかな。
ポイントのフォーキッシュな風味も前作以上に洗練された。いや洗練されちゃいけないのかもしれないが、前作のような路線は継承しつつも一般受けしそうなメロディへアレンジされていて嬉しい。
クサメロファンも満足させつつ、普通のメロスピ/パワメタファン、そしてメロデスやシンフォ・ブラックファンにも受け入れられそうなメロディやリフになっているので、これは素直に喜ぶべきだろう。
スピードメタル化したKorpiklaaniって感じもする。
いや、フォーキッシュなDragonforceと言ってもいいかも。

まず、3曲目のBlut Im Augeだな。

先に述べた『スピードメタル化したコルピ』的な楽曲。
イントロの静かな感じからは想像もつかない疾走っぷりを見せる。
ドラフォばりの疾走楽曲に民謡メロディ。
前作だったらそれで押し切っちゃうところを、今作では中間から後半にかけて疾走しながらの純メタルメロディを投入して、そこから緩いメロディから再び爆走（ブラスト付きで！）と楽しませてくれる。
音圧が抑えめになってるので、楽器の音も際立って聴こえる。

続く4曲目のUnbesiegtはビックリすること確実。

いきなりラテン系のノリかよ、と。踊れるメタル？みたい。
フォーキッシュなメロディというよりは、やはりラテン系…サンバって感じなんだろうな。ここらへんは新しいアプローチだろう。
でも、底辺に流れるメロスピ魂はここでも健在だ。
こういう曲をモノに出来るのだから、確実に成長してるな。

更にそれに続く5曲目のVerrat

いきなりイントロからメロデス的なGで入り、デス声の絶叫。
楽曲も初期Kalmahっぽい感じが漂う。
明らかにフォーキッシュな色を抑えめにして、ブルータリティを前面に押し出しているので、この辺りもバンドにとっては新機軸。
ブラストの使い方も堂に入ったもので、メロデス系の楽曲でも一流のものが書けることを証明している。マジでカッコいいし。

で、更に続く6曲目のSnüffel

クラシカルじゃないChildren Of Bodomって感じでしょうか(笑。
イントロから普通に古臭いメロスピをやっている（褒めてます）。
voがデス声なだけで、そのvoラインも完全にメロスピ。
というかさ、民謡風なメロディはここには無いし(笑。

もう前半だけでこの多彩ぶり。
全曲レビューになっちゃうくらいの傑作なんだよ、実際。
7曲目のHeimwärtsも、涙が出るくらいカッコいい。
11曲目のRuf In Den Windの疾走っぷりも、鳥肌もんだ。

ちなみに、ラストのMana
16分半もある楽曲なんだけど、これがインストなんだよね。
もうその事実だけで引いちゃう人が多数居そうだけど、これがまた凄まじくカッコ良くてドラマチックなインストに仕上がってる。
Equilibriumのバンドとしての集大成なんじゃないか？
これ1曲で物語が起承転結してるので、どこも切り離せないし、全く飽きることなく最後まで聴き通すことができる大傑作曲だ。
このアルバムの最大の見せ場で、アルバム自体がこの曲に集約されていると言っても過言ではない。インスト史上の金字塔だろう。

久々に褒めまくりのアルバム。
今のところ、何度聴いてもマイナスな部分は見当たらない。あの1stを越えてるのは間違いないし、こうしたフォーキーなメロディを盛り込んだバンドの中では完全に最高峰に君臨してるのも間違いない。
もう、今年のアルバムでベスト3に入るのは確実だろうな。
あぁ、これでBURRN!的には83点なのか…。

2008.10.04初出