Defying The Gods/Rise To Fall

スペイン出身モダン・メロディック・デスメタルバンドの2012年リリース2ndアルバム。
Disarmonia MundiのEttore Rigottiが主催するCoroner Recordsに所属、元々の1stは自主制作盤に近い形で2008年のリリースだった。それをCoronerと契約するにあたってEttore Rigottiがキーボードの導入とヴォーカル面でのアレンジ、更にアートワークも新しくして2010年に再リリースした。

1stもモダンなメロデスであったがモダンが相当に勝ったメロデスであって、メロデスっぽさはデス声のみと言ってよい状態だった。Ettore Rigottiが関与したというキーボード面もサイバーテイストを表現しているかのようで、メロデスっぽさを更に減退させていた。反面、メロデスと考えるなら思いっきり聴きやすいサウンドになっていたのも事実で、デス声をフューチャーしたアグレッシブなモダンメタルとしてはかなりのクオリティだったと思う。アグレッシブさとメロディアスな部分のバランスは非常に良好な作品だった。

さて、本作を1stから見てみると相当にメロデスっぽくなったな、という感じだ。
同じメロデスでもDisarmonia Mundiほどアグレッシブではなく、現時点で最新の"The Isolation Game"をよりモダンに仕立てた感じだ。ハッキリと言うなら、In Flamesにおける"Reroute To Remain"以降の音楽性をもう少しアグレッシブにして疾走感を出したとも言える。Facebookの"影響を受けたもの"の中にその名があるので確信犯と言ってもいい。他、Soilworkからサビメロ…特にヴォーカルメロディの作り込みを学んだかなと思える部分もあるし、全体的なアレンジ面はEttore RigottiがプロデュースしていることもあってDisarmonia Mundi的なサウンドバランスとなっている。なので、北欧メロデスと思って聴くのが正しい。
音楽性イコールIn Flamesで説明がほぼ終わってしまうのだが、In Flamesを知らずメロデス界に足を踏み入れてしまった人にとっては"?"マークが飛びまくりだと思うので音楽性を解説しておくと、メタリックだが音程感に乏しい単音リフをベースに叙情的なリードを載せて疾走し、哀愁的というかメロウなサビメロを搭載したメロディック・デスメタルスタイルのことですね。"イエテボリスタイル"と呼ぶ人もいます。
In Flamesとの違いはほとんど無いですが、あえて言うならシンセが多めだということとスパニッシュなギターフレーズが時折見られるということですかね。シンセ面は前作ではサイバーテイストたっぷりで場違い感が強調されていたが、本作では音的な隙間を埋める形での導入といった趣が強く、そのため音圧は相当に厚めに感じられると思う。一言で言うと"ダイナミックなサウンド"だ。ギターに関しては叙情性のあるクラシカルなプレイを見せる場合もある上、国民性なのだろうかフラメンコのフレーズを取り入れてる部分も見られる。
ちなみに、"メタルコア"として紹介している人もいますが、グルーヴ感を強調したバッキングがあるわけでもなくブレイクダウンも存在せず、メタルコア/ハードコア的な方法論を踏襲した部分は全くありません。

…と、In Flames激似と貶してるように見えるかもしれませんが、個人的には何かに似ているのは悪いことだとも思っていないし、そもそもメロデス/メタルコア系にオリジナリティを求めるのがナンセンスだとも思っているので、楽曲さえ良ければ似ていようとパクリだろうと関係無し。こうしたジャンルの音楽では似ている云々より作曲面やメロディ面、そしてアレンジ面でのセンスというものが大事なのだと思うから、このバンドのようにアレンジ面でのセンスの高さが感じられるバンドは大歓迎。クオリティは非常に高いと思う。

 

Ascend To The Throne
アルバム中で一番シンセが活躍してるわりにはアグレッシブさやメロデスっぽさもアルバム中で最も高い曲の一つ。リフとかメロディはIn Flamesなのにテンションの高さでそれっぽく聴こえない(笑。

 

The Compass
オリジナリティの欠片も無くIn Flamesそのままだけど、程良いアグレッシブさとメロウさを同居させたサウンドはカッコイイのでマイナスにはならないね。でも、歌い方はアンダースを完全に意識してるよねww

 

Inflexible Kingdom
モダンメロデス楽曲なんだけど、モダンさとメロデスっぽさのバランスがすごくイイね。聴きやすいと思うので、メロデス初心者にはオススメかも。ただ、クリーンvo比率が非常にたかいのでモダンメタルかな。

In Flamesタイプのメロデスが好きなら間違い無くマストなアルバム。そもそもメロデスファンなら、2012年度上半期で最も購入をオススメする強力盤だ。In Flamesがメロデスの領域を外れてモダンメタル化した今はこうしたメロデスっぽさを残した音楽性は貴重だと思う。こうしたメロデスも衰退してきているしね。

 

Defying The Gods - Rise to Fall

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