The White Disease/Oniromantic

イタリアの"自称"ゴシック・メタルバンドが2012年にリリースした1stアルバム。
結成は2009年なので比較的若いバンドだがメンバーそれぞれの音楽活動歴はそれなりに長いようで、2000年ごろに活動していたStygianというメタルバンドに在籍していたAndy Soresina(g)とMattia Sciutti(Dr)がStygian解散後に袂を分かった後の2008年頃に再び合流。そこにEvilfireというバンドに在籍していたElia Fagnani(Bass)とMauro Mazzara(vo)、ソロミュージシャンのSilvano Bianchi(g)が加入して現在のバンドの形が出来上がったということだ。
バンド名にどんな意味があるのか不明だが、Stygianの2ndデモのタイトルと同じだ。

音楽性はメランコリックメタルと表現した方がいいと思う。沈鬱系な要素はほとんど無く、どちらかと言えばノリノリ系ゴシックメタルに分類できるかもしれない。狙っているのがどの辺りのゴシックメタルなのかは不明だが、絶望感を表現しようとは思っていないのか、それともそれを表現する力量が足りないのか、まぁ後者だとは思うのだが（笑）、スローなテンポで淡々と進行させるとかメランコリックなメロディを投入するとかダークな雰囲気という要素はあるものの、絶望感を表現するには説得力や深みに欠けるかな。
ただ、逆にそうした絶望感が薄いだけに聴きやすく入り込みやすいゴシックメタルであるのは事実で、Lacrimas Profundereがそうであるようにメタル感を残しながらマイルドにゴシックを表現するというスタイルはゴシックをあまり聴かないメランコリック系のメタルファンにも受け入れられそうだ。そもそもゴシック系と括ってしまうのが間違いなのかもしれず、メランコリック・メタルと表現すればしっくりくるサウンドだ。
特徴的なのはプログレッシブ系の要素もわずかだが混入していることで、テクニカルなリフワークが時折見られたり変拍子っぽいものが使われる場面がある。それが完全に消化しきれていないのは残念だが。
耽美的な面を表現するためのシンセや女性コーラスも使われているのはゴシック系としては王道。ただプロデュース的な問題だと思うが、シンセはかなり奥に引っ込んでいるためそれと分かりづらい。そのため音的に厚みや広がりが欠けるかな、と思う。その分ギターの活躍度は相当なもので、おそらくAndy Soresinaがリードギターを担当しているのだろうが、数々のデス系バンドを渡り歩いてきただけあってメタリックなフレーズを弾きまくっている。曲によってはギターソロも弾いているし、完全にギター中心のサウンドだ。
voは中高音系の声質を持つ男性で、ゴシック系にあっては力強い歌い方をする場面が度々ある。

High Resolution God
前半部をスローで展開させていくので重めゴシック路線かと思ったら、サビで突如転調させてビビった。そこから先はノリノリ系ゴシックスタイルで進行。ギターソロも自然に搭載。転調した後の軽く疾走するパターンが好きだな。もう少しシンセが前面に出ていれば音の広がり感も表現できたんじゃないかなぁ。

The Dark Side Of Light
6分半の大作で、前半部はスロー&静かめの淡々系。が、途中でいきなり転調してメタリックに変化。中盤で一度落とした後に眺めのギターソロを導入。全体的にドラマチックな作りの楽曲になっていますね。

Banished From Heaven
疾走感ばかりが目立つ楽曲で、これはもうゴシックではなく普通にメロディック・メタルだよね。
個人的にはこうして疾走するメリハリのついた曲は大好きなので、ドンドン増やして欲しいと思う。
サウンド的に広がり感は足りないけど、これプロデュースを変えたらかなり映えると思うな。

ゴシック系と決めてかかると肩透かしを食らうサウンドだ。シンセは使われているもののあまり大袈裟なサウンドプロデュースはされておらず、シンプルな面が強調されているので耽美的な要素は薄い。メロディック・メタル的要素が相当優っているため、メランコリック系メタルと思って聴いた方がいいと思う。
End Of You、Entwine、Lacrimas Profundere、特にShamrainといったゴシック系の中でもあまりそれを前面に押し出していないシンプルサウンドスタイルを持つバンドが好きなら楽しめると思う。

今後としてはプロデュースというかアレンジ面の改善を望みますね。
もっとシンセを効果的に使えばダイナミックで音の広がりも表現出来ると思うし、そうすればドラマチックな展開を持つ楽曲が生きると思う。なんか、いかにもスタジオで録りました！っていう音なんだもん。
個人的には"Banished From Heaven"の方向性を推し進めてもらえるといいんですけどね。

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