Existentia/Trail Of Tears

ノルウェー出身のゴシック…というか、メランコリック系のシンフォニック・デスメタルを演っているバンドの2007年発売5th。
これを"ゴシック・メタル"と呼ぶにはガチなゴシック・メタル・ファンに失礼というものかもしれないが、Disk Unionでは堂々と"ゴシック"と謳ってるんだよなぁ。昔なんかもっとデスというかブラックっぽかったし、バンドがゴシックメタルと自称してるんだろうか?

まずvoとしては、男ノーマル+男デス+女ノーマルの組み合わせ。
メランコリックというかゴシックというか、そうしたメタルと聞いて最初に思い浮かべるのはSentencedかもしれないが、音楽性は全く違う。音楽性の 基本は、ドラマチックなエクストリーム系のメタルだ。そこに男デス声のアグレッシヴで若干ブルータルなパートと、女性voのコーラスや男ノーマルvoの耽 美なパートが混在している形。
ゴシックと呼ぶにはパワフルでアグレッシヴ過ぎるし、メロディック・デスメタルと呼ぶにはブルータリティが足りない感じだ。
Mercenaryを更にドラマチックにしたと言えば分かりやすいか。

1stから4thまでの音楽性もほとんど変わらないんだが、クオリティは高いものの楽曲の纏まり感の無さでゲンナリする部分も見られた。
本作ではそのあたりを完全に克服して、ドラマチックなパートはよりドラマチックに、耽美さや重厚さもより増して、前作で見られた無茶な爆走は影を潜めて、整合感のある疾走感を見せている。

1曲目のDeceptive Mirrorsで悶死確実だ。

ノリノリなイントロのリフで、もはやゴシックでは無い…と思いきや、荘厳な女性voのコーラスが絡んでくるあたりやはりゴシック?なんて思っていると、いきなりデス声炸裂で本編に突入するのだ。
その後もデス声のパートや男ノーマルvoのパート、それに絡む女性コーラス、keyの音色も限りなくシンフォニックで荘厳だ。
中盤過ぎの女性voパート~keyメロが凄まじくメランコリックなんだが、それだけでは終わらない超ごった煮的楽曲構成となっている。
あらゆる要素が渾然一体となって、展開は思いっきり複雑だ。

 

3曲目のVenom Inside My Veins

いきなりブラストで幕を開けるビックリ楽曲。楽曲的には爆走しているわけではなく、ミドルテンポ中心に一部軽く疾走する感じ。
メインは男ノーマルvoの方で、一部(ブリッジ等)にデス声。
サビではかすかにゴシック的味わいも感じられる。

 

9曲目のAs It Penetrates

イントロは、マイナー調のノリノリ系(?)。
もちろんデス声から本編に突入するんだが、やはりバックのシンフォニックなkeyがいい味を出している。もちろんGも大活躍だ。
このkeyの音色とノーマルvoの憂いのある声がかなりのポイント。
中盤以降はピアノも絡めたゴシックパート…というか、メロディック・メタル的なパワーバラードのような構成で泣ける。
男ノーマルvoが一番合っている楽曲ではないだろうか。

基本的にはゴシック+エクストリーム・メタル。
サビでの盛り上がり重視というよりは、ゴシック的な耽美さをサビに取り入れた新世代メロディック・デスメタルとも言える。
このアルバム、ゴシック好きから見ればアグレッシヴ過ぎると感じるだろうし、メロデス/パワメタ好きには盛り上がりに欠けると感じ、下手したらどちらのファンにも駄作扱いされる可能性もある。

楽曲展開の幾分、無理矢理というか力技というか馴染んでない部分も見受けられるものの、この志の高さは相当のものと感じる。
この路線を極めたら、かなり面白い存在となりそうだ。

 

2008.11.18初出

Existentia - Trail of Tears

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